2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『君は隅田川に消えたのか』

版画家・藤牧義夫。美術史においてさして有名な作家ではないが、本読みの方なら、もしかしたら洲之内徹のエッセー、『気まぐれ図書館』シリーズの「中野坂上のこおろぎ」、「夏も逝く」、そして同シリーズの絶筆となった、「一之江・申孝園藤牧義夫」で取り…

『ご先祖様はどちら様』

実は高橋秀実さんの本は、おそらくほとんど読んでいる。しかしながら、経験的に言えば、その面白さを人に伝えるのは実はなかなか難しい。面白いよ、と言って直接本を読むことを勧めれば、大抵の人はすごく面白かった、と言ってくれるのだが、どう面白いのか…

『乾燥標本収蔵1号室』

先日、飲んでいる最中に電話が鳴り、某誌編集者から、いきなり翌日締切りで書評原稿を書いてくれ、と言われてしまった。うっかりして、依頼を忘れていたらしい。そのとき読んでいたのがちょうどこの本。乾燥標本収蔵1号室―大英自然史博物館 迷宮への招待作…

『ハウス・オブ・ヤマナカ』

科学ノンフィクションを除いて、日本のノンフィクションは、世界的に見て非常に優れていると思う。一般書であっても、取材によって得られた事実や史料の扱い方が誠実で、読者が作品の背後にあるそれらの事実まで、リアルに届くことができるからだ。乱暴な言…